供羪・法要・お仏壇のまつり方

供羪(養)について
供羪とは、忘れないこと。
人は、死を迎えると、その存在は消えてしまうのでしょうか?

いいえ、そうではありません。私たちは、多くの方々が亡くなってなお、残された方々を励まし、助け、支えている場面を数多く見てきました。亡き人の思いや願いが生者と共に生き続けている事を感じるとき、人はつながりの中で、生死を越えて生き続けることを強く感じます。供羪という行いを通じて、大切な方とのつながりを保ち続けるお手伝いが出来ればと思っています。

私たちは、生死を超えた人とのつながりを、大切にしたいと考えています。

家族や友達、多くの人とのつながりの中で生きる私たち。でも、いつまでも一緒にいたいという思いとは裏腹に、死の別れは逃れることは出来ないものです。誰にでも訪れる「死」という別れの現実。でも、「いのちの終わり」が「関係の終わり」になってしまうのでは、あまりに寂しい気がします。一緒に向き合うことは出来ないけれど、その人を心に思い、願いを共にしながら生きていく事が出来れば、それはとても心強く、しあわせなことなのではないでしょうか。

だからこそ私たちは、大切な人との生死を超えた絆を大事にしたいのです。

法事の営み方
法事とは、本来お釈迦さまの教え、仏さまの心を知るということでしたが、しだいに仏事儀礼、行事、そして故人への供羪(追善供羪)を勤めることが、一般的に法事と呼ばれるようになりました。

したがって供羪とは、施主が、仏さまに飲食や花をお供えし、また読経をすることによって、善根(良い行い)の功徳を積むことです。

その功徳を回向(えこう:たむけること)することによって、ご先祖さまや故人に対し、さらに、すべての人びとの冥福を祈り、あわせて、自分を含むすべてのものが仏道を成就することを願うものです。

心のこもった法事がとり行われるように、施主(せしゅ)としての準備とその実際を心得ておきましょう。

 【日取りの決定まで】
年回法要は、故人の祥月命日またはお逮夜に営むのが正式です。しかし、諸事情により都合がつかない場合は、祥月命日に当たる日より前に行なうのがよいでしょう。

日取りが内定したら、まずは菩提寺に連絡し日程を調整します。施主家の都合のよい日であっても、寺院のほうで諸行事が予定されている場合があるからです。法事の日取りは菩提寺とよく相談したうえで、遅くても1カ月くらい前までには決めるようにしましょう。

 【年回忌が重なったら】
法要ではできるだけ、故人一人ひとりについて荘厳に行いたいものです。しかし、同じ年に7回忌や13回忌が重なるという場合があります。

そこで、2つ以上の法要を合わせて行う時は、新しい方の命日に合わせるのが一般的です。前の例では7回忌の命日に13回忌を合わせるようにします。但し、1周忌に限っては、他の年回と合わせて行なうことはさけたほうがよいでしょう。故人に対する思い出や悲しみも深いものがありますので、できれば3回忌ぐらいまでは、重ねないように丁重に営みたいものです。

【案内状の送付】
近親者だけの法事ならば、電話連絡だけでもすみますが、故人に縁の深い人びとを招く場合には、案内状を差し出すのが丁寧です。法事の案内状に定型はありませんが、参考に例文を掲げておきます。

法事の行われる場所(菩提寺等)までの案内図や塔婆建立の有無も書き添えておくとよいでしょう。


【服装と数珠について】
法事の際の服装は、施主の側は略礼服等を着用するのが一般的です。また、参列者も華美にならないように心がけ、きちんとした服装で参列しましょう。
そして、施主も参列者も数珠(念珠)を忘れずに持参します。

 【法要に際して】
自宅で法要を営む場合は、まずお仏壇を荘厳します。準備がととのいましたら、施主が「ただいまから○○○○(故人名または戒名)の○回忌を営ませていただきます」といった趣旨のあいさつを述ベ、導師(住職)の入場を待ち、入場の際には合掌にて迎えます。正面の座についた導師の合掌礼拝にならい、参列者も礼拝するようにし、読経中は、静かに拝聴します。

読経は、仏さまの教えを説く声であり、香のかおりが、わが身を清め、そして、立ち上る香は、私たちの思いや願いを亡き人のもとに届けてくれるといわれています。身心を正し、心を静め、故人の冥福を祈るとともに、仏さまの心、故人の教えを改めてくみとっていただきたいと思います。

導師の「ご焼香を…」との言葉により、香炉を順に回すか、ご本尊の前に進んで焼香をします。読経のあと、導師の法話等がすみますと、これで法事としての式は終了ということになります。

施主は、無事終了した旨のあいさつを述べます。「本日は、故人のために焼香をたまわり、誠にありがとうございました。親しい皆さま方のお元気なお顔を拝し、故人も心から悦んでいることと存じます。…」といったような簡単なあいさつでよいでしょう。

各地方により慣習がありますので事前に菩提寺によくお伺いしておくことがよいでしょう。

 【葬儀・法事の表書き】
葬儀や法事に際して、いろいろな表書きがあります。次に揚げる表書きを参照されるとよいでしょう。

御霊前(ごれいぜん)・・・葬儀に際して故人の霊前に供える金品に使う。
御仏前(ごぶつぜん)・・・法事に際して故人の仏前に供える金品に使う。
御香典(おこうでん)・・・霊前に香を供えてくださいという意味で使う。
御香奠(おこうでん)・・・「御香典」と同様に使う。
御香華料(おこうげりょう)・・・「御香典」と同様に使う。
御供(おそなえ)・・・葬儀の際、霊前に供える花や菓子、果物に使う。
御供物料(おくもつりょう)・・・「御供」の代わりに添える金包みに使う。
菊一輪(きくいちりん)・・・軽小の金包みに使う。菊の花に代えての意。
(こころざし)・・・通夜、葬儀の世話役などへのお礼に使う。
御布施(おふせ) ・・・葬儀、法事などでお寺や僧侶へのお礼の金包みに使う。
御法礼(ごほうれい)・・・「御布施」と同様に使う。

お仏壇のまつり方
1.お仏壇とは
お仏壇は、ただ単にご先祖さまをおまつりするだけの場所ではありません。お仏壇の中は仏さまのおいでになる世界、須弥山(しゅみせん)をあらわしており、中心に本尊(ほんぞん)さまがまつられています。そうです、お寺の本堂と同じです。
お仏壇は「家庭の中のお寺」なのです。

 2.本尊さま
私たち曹洞宗の本尊さまは、仏教の開祖である釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ・お釈迦さま)です。お釈迦さまは、私たちのこの生命をどのように生きればよいのかを、お示しくださいました。お仏壇にはお釈迦様をおまつりします。

基本的には、お釈迦さまだけでよいのですが、お釈迦さまと道元禅師(どうげんぜんじ)さま、瑩山禅師さまの「一仏両祖(いちぶつりょうそ)」のお絵像をお掛けする場合には、中央にお掛けします。すでに、お釈迦さまがおまつりしてある場合には、その後ろにお掛けします。

「一仏両祖」とは、本尊さまのお釈迦さま、大本山永平寺(だいほんざんえいへいじ)を開かれた高祖(こうそ) 道元禅師さま、大本山總持寺(だいほんざんそうじじ)を開かれた太祖(たいそ) 瑩山禅師さまのことです。
一仏両祖のお絵像をお求めになるときは、菩提寺にお願いし、求めてください。
3.お仏壇をまつる意義
お仏壇が、ご先祖をおまつりするだけの場所ではないことは、すでに述べました。では、お仏壇をまつる最も大切な意義は何でしょうか。それは、お仏壇は、私たちが仏教徒として生きる信仰実践のよりどころである、ということです。

曹洞宗の信仰実践の基本は、端坐(たんざ)・合掌(がっしょう)・礼拝(らいはい)です。静かな心で端坐し、お釈迦さまに合掌礼拝することにより、私たちの日々の生活を反省し、教えを生活の中で実践する活力を生むのです。そして、その実践が心の安らぎへと連なっていくのです。

ご先祖さまをおまつりし、おまいりするということは、生命が、生命から生命へと受け継がれ、今の私があるということへの報恩感謝の実践といえるでしょう。それは、私が私ひとりで生きているのではなく、多くの生命によって生かされているのだ、と深く実践することでもあるのです。

 4.おまつりの仕方
-お仏壇の中心はお釈迦さまです-
お仏壇のおまつりの仕方について、まず、最も大切なことは、お仏壇の中心はお釈迦さまであることを、はっきりと心にとめることです。
お仏壇の上段中央に、木彫りや鋳造のお釈迦さまのお像をまつります。

-お位牌は上段の左右に-
ご先祖さまのお位牌(おいはい)は、お釈迦さまの左右におまつりし、古いお位牌は向かって右に、新しいお位牌は左におまつりします。親類、縁者のお位牌等がある場合には、この順におまつりします。
お位牌が多くなり、お仏壇が狭くなった場合は、「繰り出し位牌」や「合同牌」にしたり、「○○家先祖代々」にまとめることができますので、菩提寺にご相談ください。

-お供え物の位置は中段です-
お供え物は、本尊さまやご先祖さま、故人が“いますがごとく”お供えします。お供え物は、五つのお供えが基本です。香り(線香、お香)、花、灯明、お水、飲食(お霊膳・おれいぜん、果物、菓子、嗜好品など)の五つです。
ご飯に限らず、皆さんが召しあがる食事を、お供えしてください。そして、お供えした物は無駄にしないように、いただけるものは皆で分け合っていただきましょう。また、いただきものをした時は、必ず一度、お仏壇にお供えするようにいたしましょう。
お茶やお水をお供えする器のことを、茶湯器(ちゃとうき)といい、中段の中央にお供えします。茶湯器が一つの場合、ご飯(お仏餉・おぶっしょう)は、茶湯器の右横にお供えします。茶湯器が二つの場合は、真ん中がお仏餉です。お菓子や果物は、高杯(たかつき)に盛りつけて茶湯器の左右(逆の場合もある)にお供えします。
なお、お線香は煙をお供えするのではありません。よい香りをお供えするのです。お線香の匂いが苦手という方は、他の香りのハーブ等を、おまいりごとにお供えしてもよいでしょう。
精霊簿(しょうれいぼ・過去帳)は、見やすい位置に置くようにします。また、毎朝めくって、その日のページになるようにしてください。

-下段には三具足と精霊簿を-
下段には向かって左側より花立て、香炉(こうろ)、ロウソク立ての三具足(さんぐそく)を置きます。香炉にも表と裏があります。三本足の場合には、手前に一本の足がくるようにします。

-おまいりの必要品は下段に整えます-
日常、おまいりするために必要なリン(カネ)やお経本、数珠(じゅず)等は、下段または引き出しの中に置きます。木魚(もくぎょ)がある場合は、木魚を右に、リンを左に置きます。リンだけの場合は、右に置いてください。また、お仏壇の中が手狭になったときは、前机を置くとよいでしょう。

以上、標準的なお仏壇のおまつりの仕方について紹介しましたが、現在では家具調のお仏壇のようにコンパクトなものもありますので、分からないことは、菩提寺にお聞きしましょう。
5.おまいりの仕方
朝の洗面をすませたら、朝食前にご飯やお水、お茶をお供えし、お花のお水をかえて、おまいりします。

はじめに、姿勢を正し、お釈迦さまを仰ぎます。次に、呼吸を整え気持ちを落ちつかせます。これは、坐禅に通じる作法です。

ロウソクに火を灯し、お線香に一本火をつけ、すこし押しいただいてお上げし、リンを三つ鳴らします。

まず、合掌して一度礼拝をします。次に、「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」または、「南無帰依仏(なむきえぶつ)、南無帰依法(なむきえほう)、南無帰依僧(なむきえそう)」とお唱えします。唱え終わったら、もう一度合掌のまま礼拝してください。

お仏壇は、その家に住んでいる人の心のよりどころです。

お子さんのいるご家庭では、小さいころから共にお参りをする時間をもちたいものです。毎日のおまいりの積み重ねが、まごころに生きる姿勢を育むのです。

うれしいにつけ、悲しいにつけ、お仏壇のお釈迦さまにご報告し、曹洞宗檀信徒として人生の指針が常にお釈迦さまの教えにある生活をいたしましょう。