いま、私たちは多くの苦難に直面しています。新型コロナウイルス感染症の全世界的な拡大により、多くの尊い生命が失われ、人びとは深い悲しみの中にいます。また、戦争、貧困、格差などの社会不安、近年頻発する自然災害は、私たちに大きな痛みをもたらしています。
今日、曹洞宗の信仰に生きる私たちは、どのような生き方を目指すべきでしょうか。
お釈迦さまは、人生における苦悩の中で、菩提樹の下、坐禅を重ねられ、お悟りを開かれました。その御教えは、祖師方によって相承され、いま、私たちも頂くことが出来ます。身を調え、息を調え、心静かに坐りましょう。仏さまの智慧と同じ正信心により、ものごとを正しく見ることが出来ます。その時、おのずから他者を思いやり助け合う慈悲のこころが育まれるのです。
私たちの社会ではさまざまな分断が現出しています。感染症の広がりにより人間関係のさらなる希薄化が進む中、いまこそ、一人ひとりが菩提心を発し、人と人との温かなつながりを深めていかなければなりません。お互いに手を携え、四摂法の「同事」のおさとしを行じてまいりましょう。
すべての人びとが救われることが御仏の願いであります。
日々の生活の中で、仏さまに掌を合わせ、世界中の人びとが安らかに暮らせるよう祈り念じ、皆ともに菩薩行を進めてまいりましょう。
合掌
南無釈迦牟尼仏
南無高祖承陽大師道元禅師
南無太祖常済大師瑩山禅師
令和3(2021)年4月1日
曹洞宗管長 南澤道人